もともと自分の音楽のルーツは、大好きな「黒人音楽(ブラックミュージック)」にあるのだと聞かされ驚いた。
確かに中森明菜の歌には、なにかしら黒人の血につながるような、熱さ、温もり、が宿っているように感じられる。
「だから私のレコードは、全部、ベースやバスドラが効いてる。ズンズン、と地響きするような重い音…」
心臓の音と同じビートを持つ太鼓とは、もともとアフリカの黒人たちにとってのたったひとつの伝達手段だった。つまりそれは家族中に「さあご飯だよぉ!」と集合を呼びかける声である、迫害する白人たちに対しての怒りの言葉を、叩く音に表現できる、黒人同士のみに通じ合う、もっとも、素朴な震動だったのである。これらの歴史的背景を知らずとも黒人音楽の力強さ、魂を感じさせる歌に、子供のころから強く惹かれたという明菜の発言は興味深い。
「きっかけは、上のお姉ちゃんや、お兄ちゃんたちが、ソウルやディスコ・ミュージックを聴いてたから、影響されたのね。ディスコから帰ってきたお兄ちゃんたちが、踊りを教えてくれたりもしたし。私、音楽はブラックって思っちゃってるところがある。ニューヨークに黒人の友だちがいるんだけど、私が好きだという趣味と、彼らの趣味がまったく同じなの。だからビートルズとかは好きじゃないんだ。キレイで好きな曲はいくつかあるよ。でも好きとはいえない。あと…アメリカのカントリーなんかも、苦手」
黒人音楽を“人間っぽい”から好きだという。だかた、シャカシャカとした16ビートや、人の体温を感じさせないコンピューターで創る乾いた音を好まない。93年9月に発売された、4年ぶりの新作アルバムで、最新の流行りの音を取り入れた曲でも、積極的に厚みや、深みを加えてくれるよう、提言した。
「作曲者のものではない、私の血を、真っ赤な生きた血を注ぎたかったから」。そう話す彼女の強い視線に圧倒される。ものを創り出そうとするときの、それを説明しようとするときの、このひとのエネルギーの凄まじさは、いったいどこからくるのもなのだろうかと、いつも思う。
明菜さんの「禁区」嫌いは、こういった理由からなんですね。
個人的には、結構好きだし、2004年ライブで久々に聴いた時は感激したので、いつかまたライブで披露してくれると嬉しいんですが。
↓テレビ東京「MUSIX!」(2001年11月18日放送)に出演したときに紹介された、明菜さんの「運命を変えた1曲」です。
♪マッカーサー・パーク/ドナ・サマー
音楽プロデューサー、DJ、ライターとして活躍する岩田由記夫が、世代を越えて人気を集めている15名のミュージシャンの知られざる素顔を紹介。過去35年の中で行った当時のインタビューをもとに、数々のエピソードを交えながら、新たに書き下ろした応援歌。
中森明菜さんのエピソードも収録されています!
この記事へのコメント
キス・ザ・リム
明菜さんの「運命を変えた1曲」っていうのも納得です・・。
素敵な動画をありがとうございました。
まさ
ドナ・サマーいいですよね。上の映像当時はいくつかはわからないですが、今年で61歳を迎えるそうです。今もなお現役で頑張ってるのはすごいことですよね。ちなみにウィキペディアによると、70年代、80年代、90年代、2000年代の総てのビルボード誌のダンス・チャートにおいて1位に輝いた唯一のアーティスだそうです。すごい!